こんにちは!
プロダクトオーナー兼開発部マネージャーをしている長谷川(@roki1801)です。普段は山形県山形市にあるベーシックのサテライトオフィス「山形ラボ」にてリモートで働いております。
最近はプロダクトオーナー(PO)やプロダクトマネージャー(PM)といった職種が市民権を得てきている感覚がすごくあります。また、POやPMをエンジニアが兼務、あるいはエンジニア出身の人間がなっているというのもよく見たり聞いたりする気がします。
弊社開発部エンジニアにもエンジニア兼POが二人おります。私はそのうちの一人(もう一人はVPoE @mochizukikotaro)なのですが、今回このブログでは普段プロダクトに対して考えたり葛藤していることを書きたいと思います。本ブログを通して弊社におけるプロダクト運営まわりのことが少しでも伝われば幸いです。
ベーシックのプロダクトオーナー事情
弊社では2018年に、収益が大きく歴史も長いメディア事業における各プロダクトのエンジニアを、プロダクトオーナーへと任命しました。そのうちの一人が私でした。
それまで弊社メディア事業はプロダクトオーナー不在のまま、事業部長や営業、ディレクター、マーケティング、デザイン、開発といった各部署それぞれの要望や施策を吸い上げるだけのプロダクト運営がなされ、プロダクト成長の責任の所在が曖昧な状態で10年以上運営されてきました。
各プロダクトのエンジニアが技術理解があるのはもちろん、ビジネス領域にも精通できうるエンジニアであったため、この課題に対して、そのエンジニア達をプロダクトオーナーとし、プロダクト中心の体制を築きプロダクト価値を向上していこうという組織改善が始まりました。
プロダクトオーナーの役割や職責
そんな背景からプロダクトオーナーになった私ですが、ある問題にぶち当たります。これはPOあるあるかもしれませんが、
プロダクトオーナーの役割は何?
POの役割定義の問題です。なんならこの問題は未解決というかプロダクト規模や状況によっても責務の齟齬が発生しやすいもので、役割定義に関しましては社内でも今も課題となっております。
(今回は触れませんが、このPOの役割や職責定義問題はぶっちゃけめちゃくちゃ大きい問題なので先輩POさん達からアドバイスいただきたいです・・・)
なのでここからは完全に私なりの解釈になりますが、すごくわかりやすくシンプルに書き出すと、
プロダクトを成長させること
がPOの役割だと思っております。プロダクトを成長、つまり今よりも良いプロダクトにすることに責任を持つ人間がPOです。
では、
「良いプロダクト」とは、どんなプロダクトのことでしょうか?
前置きが長くなりましたが、これが今回のテーマです。
良いプロダクトを作りたいだけなのに
— hiroki suzuki (@roki1801) 2018年6月14日
PO任命から間もないときに、こんなつぶやきを繰り出しておりますが、そもそも「良いプロダクト」とはどんなプロダクトのことを指すのか。この一見、当たり前に答えが出そうな問いについてPOとして思いを巡らせてみました。
- 売上が大きい
- 利益が大きい
- 顧客に価値を提供している
- ユーザーが使いやすいか
- PV・SSが大きい
- MAUが大きい
- 最新技術がたくさん使われている
- 安全性が高い
- UIが良い
- UXが良い
- すごくはやい・・・
いろいろなことが頭を巡ります。そもそも事業フェーズによって「良いプロダクト」の定義も変わりそうな雰囲気です。
しかし、物事はシンプルにすべきだとスティーブ・ジョブズさんも言っております。
Simple can be harder than complex. You have to work hard to get your thinking clean to make it simple.
ー Steve Jobs
また、俳句のように本質だけをシンプルに表現するのが日本人の美意識であります。
私が考える良いプロダクトの定義は、
「ユーザーへの価値提供」と「ビジネスとしての成功」を兼ね揃えているプロダクト
です。
シンプルではない?シンプルすぎてはいけないとアインシュタイン先生も言っておりますので一旦よしとします。
Everything should be made as simple as possible, but not simpler.
ー Albert Einstein
「ユーザーへの価値提供」と「ビジネスとしての成功」の両立
どんなプロダクト事業でもユーザーがいなければ成り立ちません。ユーザーに提供すべき「価値」の本質を明確にした上で、ユーザーが求めているものを生み出さなければなりません。一方で、ユーザーがたくさんいても収益がなければプロダクトを継続することができなくなり、ビジネスとしては成り立ちません。
つまりプロダクト事業においてプロダクトは、相互依存する「ユーザーへの価値提供」と「ビジネスとしての成功」を両立しなければ「良いプロダクト」ではないのです。
しかしユーザーが求めているプロダクトを生み出し、さらにビジネス、事業として成立させることは大変難しいことです。
まず「ユーザーへの価値提供」といってもユーザーは「答え」を教えてくれません。それでもユーザーが求めるものを提供できなければ当然ユーザーはつきません。
またプロダクト事業というビジネスである以上、どこかで収益化して「ビジネスとして成功」しなければならないわけですが、そのボリュームやタイミングも事業や会社のフェーズによって異なります。
プロダクトオーナーとしてはもちろんユーザーファーストで、ユーザーにとって価値があり、ユーザーにとって使いやすいプロダクトを作りたいと常に思っております。しかし事業フェーズとして投資事業の原資を稼ぐようなプロダクト事業の場合などは、短期的に「ユーザーへの価値提供」を犠牲にしてでも目の前の売上を取る選択が必要になることがあります。
なので「ユーザーへの価値提供」と「ビジネスとして成功」を両立することが重要だと思っています。
短期的視点と長期的視点で考える「良いプロダクト」作り
ドリルを買う人が欲しいのは「穴」である
というマーケティング世界で有名な格言があります。消費者が本当に求めているものを見極めなさいよという言葉です。これはまさしく「ユーザーへの価値提供」になります。
しかし私は「まずドリルを売る必要があるときがある」と思っています。この格言を正しく引用すると
昨年、4分の1インチ・ドリルが100万個売れたが、これは人びとが4分の1インチ・ドリルを欲したからでなく、4分の1インチの穴を欲したからである
というものになるのですが、「昨年、4分の1インチ・ドリルが100万個売れた」ときに、仮にドリルを作るリソースしかなく明日にも倒産しそうなのであれば、作れば売れるそのときにドリルを作るべきです。それは短期的には「ビジネスとして成功」しているためです。
しかし長期的に考えるとドリルは売れなくなるため、『ドリルを買う人が欲しいのは「穴」である』このニーズを捉えた上で、次なるアプローチを考えるのが私の考える「良いプロダクト」作りになります。
「ユーザー≠顧客」のプロダクト
いま私がPOのプロダクトはユーザーと顧客が異なるプロダクトになります。
この「ユーザー≠顧客」なプロダクトの場合は 「ユーザーへの価値提供」と「ビジネスとしての成功」の両立はより複雑になり葛藤する場面が出てきます。
プロダクトに売上や利益がなければプロダクト事業における「ビジネスとしての成功」はありえません。そして売上や利益の源泉は顧客のみです。そして「顧客の創造」こそが企業の目的だとドラッガー先生も言っております。
プロダクト事業が、顧客の創造をするには顧客の欲求を満足させるプロダクト作りをしなければいけないわけですが、私の掲げた良いプロダクトの定義には「顧客への価値提供」は入れておりません。
「ユーザーへの価値提供」≒「顧客への価値提供」 だと考えているためです。
ここが 「ユーザーへの価値提供」と「ビジネスとしての成功」との両立で一番難しいところだと感じております。
例えば顧客から、ユーザーは明らかに求めていないものをプロダクトに反映してくれたら○○○円払う。なんてことが私がPOのプロダクトではよく起きます。
それを反映すればもちろん短期的に収益は上がります。しかしそういったものをどんどんプロダクトに反映していけば、ユーザーがまったく求めていないプロダクトとなりユーザーがいなくなり、中長期的には顧客の創造を持続できなくなりビジネスとしては失敗します。
こういった場面でのPOの役割は、たとえ理想と遠くても 「ユーザーへの価値提供」と「ビジネスとしての成功(この場合は顧客の創造)」との両立の視点で判断をしなくてはいけないです。もちろん次善の良策をスピーディーに考案して選択できるならそちらのほうが良いです。
コード品質はなんのために追い求める?
私はエンジニアでもありますのでもちろんコードも書きますが、コードの美しさや最新技術といったものにはあまりこだわりはありません。それそのものはユーザーが求めているものではないからです。
しかし著しく品質の低いコードや技術的負債は、バグや保守性・堅牢性の低下に繋がり、いつか「ビジネスとしての成功」が脅かされます。言語のバージョンがあまりに低かったり、レガシーすぎる技術もどこかでユーザーが求めていないものを生み出す原因になったり、スピーディーにプロダクトを良くすることの壁になってしまったりします。
また新しい技術がユーザーへ価値を提供することも多々あります。要はバランスの話で、技術偏重に陥いらずにあくまでユーザーニーズありきでプロダクト作りはしなければいけません。
忘れちゃいけないこと
もちろんプロダクトを成長させることは大切ですが、提供側つまり我々がプロダクト作りに価値を感じて熱意と情熱を持って取り組めていることも「良いプロダクト」を作るためには大切なことだと思います。